【完】ある日、恋人を購入した。
もうすっかり小さくなった背中を必死で追いかけると、
あたしの声がやっと届いたらしいおにーさんが、くるりとあたしの方を振り向いた。
…しかし、振り向いたその時だった。
「!!わっ、」
「!」
外は相変わらず雪が降っていて、積もっているせいか、あたしは足を滑らせておにーさんの目の前ですっ転んでしまった。
「つっ、つめたぁあ!」
雪がクッションになってくれてるから痛くは無いけれど、顔が雪まみれになってとにかく冷たい。
何だかイライラしてきてやけくそでその場に座り込んでいたら、それを目の当たりにしたおにーさんが笑いを堪えるように言った。
「だ、大丈夫?」
「…顔が笑ってる。ムカつく。ざまーみろとか思ってんでしょ」
「いや、思ってないし。立てる?」
おにーさんはあたしにそう問いかけると、スッと手を差し出す。