【完】ある日、恋人を購入した。
「…ねぇ、尚叶くん」
「うん?」
もうこれ以上は思い出せなくて、ついに、聞いてみようと口を開いた。
「あたしって…
あたしと尚叶くんって、前にどこかで会ったことない?」
「!」
あたしはそう問いかけると、少し離れた場所から尚叶くんを見つめる。
一方、いきなりそう聞かれた尚叶くんは、その言葉に少し目を見開いて…
少しの沈黙のあと、やがてあたしに言った。
「………さぁ?」
「!」
「ごめん。俺は知らない」
そう言うと、「っつか、早く行くよ」とまた背中を向ける。
「…そ、っか」