【完】ある日、恋人を購入した。


そう言って、「ん?」と面白そうにあたしの顔を覗き込む。

けど…夕べは何にもなかったし。



「…別に?何も無いよ」



あたしがそう言うと、アズサは「そんなわけないでしょ」と口を尖らせる。



「だって、彼氏彼女だよ!二人きりじゃなかったの!?」

「…二人きりだけど」

「だったら何かあるでしょう!あたしだったら、彼氏と…」

「んー…まぁ尚叶くんは超奥手らしいからね。あたしがほとんど初めての彼女らしいし」



あたしはそう言って、「可愛い彼氏でしょ?」って笑う。

夜に彼氏と何もないのもよくない?ってか尚叶くんが可愛すぎた。


しかしあたしがそう言うと、アズサが言う。



「…お、奥手なんだ。へー、意外だね。トモがそういう人と付き合うって」

「そう?」

「てか彼氏、尚叶くんってんだ。覚えておこう」



…何のために覚えるのよ。


あたしはアズサの言葉にそう思いつつも、やがて休憩が終わって仕事場に戻った。

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