【完】ある日、恋人を購入した。
あたしはその手を遠慮なく掴むと、力を込めてその場に立った。
でもその力も、おにーさんは表情一つ変えずにちゃんと支えていて。
あたしが両手で服についた雪を払って、
「あーもう最悪!おにーさんにお礼言おうとしたらこんなことになるなんて!」
「お礼?」
「そう!さっき、なんだかんだでバスのお金あたしの分も払ってくれたでしょ?ありがと!」
「!」
そう言っておにーさんに目を遣ったら、おにーさんは何故かビックリしたような表情であたしを見つめていた。
…ん?
「…どうかした?」
そんなおにーさんにあたしが不思議がってそう問いかけると、おにーさんはあたしから目を逸らして言う。
「あ、いや…」
「?」
「お礼とか、されるって思ってなかったからビックリ…。ラッキーとしか思ってないんだろうなぁって」
「そんなことない!だっておにーさん命の恩人だもん!」