【完】ある日、恋人を購入した。

あれからいざこうやってスクリーンを前にしたあたしは、見たかった映画に興奮ぎみで。

スクリーンを見つめながら、あたしは隣にいる尚叶くんにそう話しかけるけれど、尚叶くんは何も言ってくれない。

映画の中では二人の男女のキスシーンが続いていて…

……わ、アズサが言ってた通りだな。


そう思って、尚叶くんはどうしてるかな、と隣を見てみると、尚叶くんはやっぱりスクリーンを直視できていない。

しかも、こんな薄暗いなかでもわかるくらいに真っ赤な顔をしている…。

その表情は、“なんてことしてんだよ”って顔。


かわいいーっ!



「ちょっと、せっかくお金払ってここに座ってるんだから、ちゃんと見なきゃ!」

「え、で、でも…」



…いくら何でも過激すぎる。


あたしの言葉に尚叶くんはそう言うと、その真っ赤な顔のまま下を向く。



「………」



……尚叶くん、純粋なのはいいけど。

なんだか先が思いやられるな…。

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