【完】ある日、恋人を購入した。
そしてみきほさんはあたしにそう言って、優しい笑顔を向けてくれる。
そんなみきほさんのその言葉に、一方のあたしは納得がいかないながらも、
「恋愛初心者」とか「奥手」とか「不器用」とかの言葉がぐるぐる頭の中を巡って…。
ま、確かに。
この前は仕事後に会ったわけだし。
尚叶くんだって疲れていたのかもしれない。
でもさ、せっかくあんな過激なラブシーンを見たあとだったのに。
あの後、少しは…尚叶くんのこと期待してたのにな。
やっぱりまだ、今の尚叶くんじゃムリ…なのかな。
あたしはそう思うと、もう何度目かわからないため息を吐いた。
…けど。
「………わかりました」
「あ、わかってくれた?」
「はい。…尚叶くんと仲直りします」
「そう。良かった」
あたしはしばらくの間考え込むと、やがてみきほさんにそう言った。
やっぱ、もう少し経過を見てみよう。
今は尚叶くんのペースに合わせるんだ。
あたしは少し寂しい気持ちを抱きながら、そんなことを決意した。
しかし、そんなあたし達の会話を“ある人物”がこっそり盗み聞きしていたとは知らずに…。