【完】ある日、恋人を購入した。

そのあと何故か、電話越しに尚叶くんが黙り込んだ。


…ん、あれ?



「ちょっと、尚叶くん?」



聞いてる?


しかし、あたしがそう言おうと口を開いたら、それを遮るように尚叶くんが言う。



「……ほんとは、あの日…」

「?」

「あのラブシーンが凄い映画、観たあとだったから…友香と二人きりになるの、怖くて」

「え、」



怖い?

って、何で?


あたしが尚叶くんの言葉に疑問を持っていると、尚叶くんが言葉を続ける。



「……二人きりになったら、あのまま友香を傷つけそうで」

「…」

「だって…俺だって“男”だし」



理性がきかなくなったら困る。


と、首を傾げるあたしに、尚叶くんは確かにそう言った。

< 130 / 359 >

この作品をシェア

pagetop