【完】ある日、恋人を購入した。
せっかくの尚叶くんの勇気が台無しで、あたしはそこが一番聞きたい。
いや、ね。
そりゃああの女の人の事、最初は正直良い気分はしなかったけど。
今は尚叶くんのおかげで少し前からほとんど気になってないし。
でもせっかくその貴重な言葉を聞けるなら、しっかりと…
だけどもう言う気はないらしい尚叶くんは、もう同じことを言ってはくれない。
「で、でも……ちゃんと言ったし」
「え、でもあたしは聞こえなかったよ」
「………あの女の人のことは気にしないで」
「うん、それはもう気にしてない。今は尚叶くんのその肝心な言葉が聞きたい」
「!…~っ」
あたしはそう言うと、ちょっとしつこいかもしれないけれど、そう言って迫ってみる。
でも、これくらい平気でしょ。
そう思って耳を傾けるけれど、尚叶くんの口から出てくるのは違う言葉。
「…夕飯どこで何食べたい?」
「尚叶くんの“好き”が聞きたい」
「あ、焼肉は?」
「っ、食べたい!」