【完】ある日、恋人を購入した。

せっかくの尚叶くんの勇気が台無しで、あたしはそこが一番聞きたい。


いや、ね。

そりゃああの女の人の事、最初は正直良い気分はしなかったけど。

今は尚叶くんのおかげで少し前からほとんど気になってないし。


でもせっかくその貴重な言葉を聞けるなら、しっかりと…


だけどもう言う気はないらしい尚叶くんは、もう同じことを言ってはくれない。



「で、でも……ちゃんと言ったし」

「え、でもあたしは聞こえなかったよ」

「………あの女の人のことは気にしないで」

「うん、それはもう気にしてない。今は尚叶くんのその肝心な言葉が聞きたい」

「!…~っ」



あたしはそう言うと、ちょっとしつこいかもしれないけれど、そう言って迫ってみる。

でも、これくらい平気でしょ。

そう思って耳を傾けるけれど、尚叶くんの口から出てくるのは違う言葉。



「…夕飯どこで何食べたい?」

「尚叶くんの“好き”が聞きたい」

「あ、焼肉は?」

「っ、食べたい!」

< 154 / 359 >

この作品をシェア

pagetop