【完】ある日、恋人を購入した。
まさかシュウさんが目の前に来てるなんて気づかなかったあたしは、
突然のことにシュウさんから少し顔を離す。
「え、あっ…どう思ってる…とは?」
「その元カレの神崎くんのことだよ。もうきっぱり忘れてるんでしょ?」
だって今は、尚叶がいるもんね。
シュウさんはそう言うと、あたしの返事を待つ。
「…はい、まぁ…今は何とも思ってませんよ」
「だよね~」
「…」
シュウさんはあたしの言葉を聞くと、そう言ってまた仕事を再開させるべくあたしに背を向けてパソコンと向かい合う。
でも、そんなシュウさんの後ろで、一方のあたしはふと考える。
そういえば、あたし…尚叶くんを購入して、ちゃんと好きになれてるはずなのに…
まだ、神崎くんとの思い出の品とか、アドレスを消したり捨てたりしてなかったな。
だってまだ………今は考えたくないけれど。
完璧に忘れられたわけじゃないなんて、周りには口が裂けても言えない…。
早く忘れなきゃ。