【完】ある日、恋人を購入した。
もう既にお酒が進んでいるせいか、尚叶くんを目にするなり興奮気味にそう言ってきた。
…うん、予想通りの反応。
あたしがそう思いつつ尚叶くんと一緒に座ろうとすると、そんな尚叶くんに皆が言う。
「あ、初めまして~。トモと同じ会社の同僚の、アズサっていいます」
「ど、どうも。なお、」
「知ってます、尚叶くんですよね?いつもトモから話は聞いてて、」
「あたし、ユズキっていいます!よろしく、尚叶くん!」
…女子の集団の中に、独りだけイケメンを置くだけで凄い反応だ。いつもの女子会と皆の雰囲気が違う。
あたしはそう思いながら、賑やかななかで尚叶くんの隣で独りメニューを開く。
隣で尚叶くんが困っているけれど、敢えて助けはしない。
そんな尚叶くんの姿がかわいかったりして。
「尚叶くんって、普段なんの仕事してるの?」
「××に勤めてます、」
「え、超大手企業じゃん!」
「ね、トモのどういうところに惚れたの?聞かせて~」
そして、尚叶くんと一緒に来たはずのあたしはいつの間にか空気のような存在。
…まぁ、いいけどね。想像出来てたことだし。