【完】ある日、恋人を購入した。
「…じゃ、俺帰るわ」
「!」
そう言って、あたしから離れた。
あれ?送るって言っ…
「そもそも、お前の彼氏の話、したかっただけだし」
「…」
「あ…っつか、じゃあお前も前に何処かで会った記憶があんだ?その尚叶って奴と」
「……うん」
あたしがその問いに頷くと、神崎くんは「なるほどねー」ってまた考えだす。
…ねぇ、思い出してお願い。
もうあたしじゃムリだから。
だからあたしは、少し黙ったあと神崎くんの後姿に言った。
「…じゃあ、」
「?」
「お願い。せめて、一週間以内に思い出して」
「んな無茶な…」
「頼んだよ。じゃああたし帰るから。ばいばいっ」
あたしはそう言うと、半ば強引に神崎くんから離れて再びマンションへと向かう。
その間も、相変わらず降り続ける綺麗で柔らかい雪…。
この雪を見ていたら、何故か懐かしい感じが心をくすぐって………。