【完】ある日、恋人を購入した。

あたしは小さくそう呟くと、驚きのあまりその場から動けずに尚叶くんだけを見る。

気が付けば、自分でも自然にそう呟いていた。


…思い出した。いま、全部。

確かに、前にあたしと尚叶くんは一度会っていた。それはやっぱり勘違いじゃなかったんだ。

目の前の尚叶くんは、あの時のおにーさんだ。親切なあのおにーさんなんだ。


ほんの少しの間あたしが尚叶くんを見つめていると、やがて向かいにいる尚叶くんが不思議そうに言う。



「?…どした?友香」

「…え、あ…」



その瞬間、あたしは過去のことを言ってしまおうと思った。

だってもうこれって、明らかに運命の出会いを果たしたも同然で。


だけど…



「あのさ、前に…」

「うん?」

「…、」



でもあたしは、言おうとしてその言葉を詰まらせた。


…ちょっと待って。でも前に、あたしは尚叶くんに…

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