【完】ある日、恋人を購入した。
“…ねぇ、尚叶くん”
“あたしと尚叶くんって、前にどこかで会ったことない?”
って、一度そう聞いていたはず。でもそしたら尚叶くんは…
“さぁ?ごめん。俺は知らない”
なんてあっさりそう言われて、尚叶くんも尚叶くんで覚えていなさそうだったっけ。
だとしたら、今は別に…
「……あ、な、何でもないや。それより、本当にありがとね。尚叶くん」
「…、」
すぐには、言う必要は無いか。
あたしはそう思うと、昨日のことをもう一度謝るべく尚叶くんに言った。
「で、あのさ、昨日のことなんだけど」
「うん、」
「別にあたし、尚叶くんとするの……その、嫌じゃないから。全然」
「…え、」
「でも昨日は、心の準備が出来てなくて…いやとか言っちゃったの。ごめんね」
あたしはそう言うと、本当に尚叶くんに申し訳なかったな…と頭を下げる。