【完】ある日、恋人を購入した。
あたしはそう思うと、何気なくチラリとその“どっかの誰かさん”を見遣る。
するとその“どっかの誰かさん”である神崎くんは、すぐにその視線に気が付いたようで…目が合ったけれどため息交じりに逸らされた。
…神崎くんと旅行した時なんて、喧嘩しても仲直りしないまま帰ってきたりして、超最悪だったんだから。
でも、今は良いんだ。尚叶くんは優しいから。
あたしはそう思うと、幸せいっぱいになりながら時間ぎりぎりまで旅行のことをアズサに話した。
…この後神崎くんをキッカケに、あたし自身が“地獄を見ることになる”とは知らずに…。
……………
「…ふぅ」
そのあと、誰も居ない廊下。
あれから休憩時間になって、あたしは尚叶くんにラインを入れるべく独りで文章を作っていた。
この廊下の窓から見える、街の景色を画像に切り取って、「きれいでしょ」なんて送ってみる。
画像には、あたしの左手のピースつき。
仕事中の合間に、こうやって連絡するのが楽しいんだ。
しばらくあたしがラインをしていると、その時後ろから声をかけられた。
「トモ、」
「?」