【完】ある日、恋人を購入した。
「…っ、」
あたしはその言葉を聞くと、目を見開いて後ろをゆっくりと振り向く。
そこにいるのは、口角を上げて微笑んでいるシュウさんの姿…。
あたしはまだ…放心状態で、何も言えない。
「ごめんね。ビックリしてるでしょ。って、そりゃそうか。
だって友香ちゃんは、今までずっと尚叶が商品だって思い込んでいたんだから」
「…、」
「でも、これが事実なんだ。本当の商品は、ずっと友香ちゃんの方だった。
それに友香ちゃんの言う通り、友香ちゃんと尚叶は100%の恋人じゃない。
ある日尚叶がいきなりこの店に来て、友香ちゃんのことが欲しいって言ってきたんだ。
…ま、売った俺も俺だけど」
シュウさんはそこまで言うと、近くの椅子に座って、あたしに本当のことを話し始めた。
それまでは頭の中がぐちゃぐちゃでよく分からなくなっていたけど、
シュウさんの話を聞いていくうちに少しずつ理解が出来た。
シュウさんの話によると、尚叶くんは数年前にあたしとバスの中で初めて出会って、そこからずっとあたしのことが気になっていたらしい。
でももちろん連絡先も知らない、名前も知らない相手だし、ただ“トモ”と呼ばれていたこととあたしの“超ワガママ”な性格を頼りに、この店に来て…。
その時にシュウさんは、尚叶くんの押しに負けた…と言った。
“みきほに協力してもらって、友香ちゃんを商品にした”と。