【完】ある日、恋人を購入した。
…終わり…?
「尚叶と、約束してたんだ。友香ちゃんがこの事実を知った時、この話は無かったことにするって」
「…話って、」
「尚叶と友香ちゃんのこと。友香ちゃんが本当のことを知ってしまえば、もう完全に売り方に違反してるからね。
友香ちゃんを返品…というよりかは、最初から無かったことにする。お試し期間も、購入も」
「!」
シュウさんはそう言うと、またビックリするあたしに目を遣って、言った。
「その方が友香ちゃんも幸せだろ?それに、もう尚叶とは逢わない方がいい。っつか、逢いたくもないだろうし」
「…」
「…あ、それと、友香ちゃんのお金。ローン組んでどうのこうの言ってたけど、一切引いてないから安心して。むしろ、商品の立場だから増えてるよ」
…これからも。
シュウさんは最後にそう言うと、ふいにあたしを背後から抱きしめてきた。
…香水の、良い香り…。
その言葉の意味はよくわからないけれど、ショックが大きすぎて、目からは涙が一滴も零れない…。