【完】ある日、恋人を購入した。

あたしはふいに神崎くんの言葉を遮ると、一言そう言った。

だってもう、シュウさんのおかげで尚叶くんとは何もないから。

そしてあたしのその言葉を聞くと、神崎くんが少し驚いたような顔をする。


けど、



「でも、神崎くんとはもう一緒にならない」

「!」

「気持ちは嬉しいよ。ありがとう。それにあたしも、正直言うと神崎くんのこと忘れられなかった。すっごく好きで」

「…、」

「…だけど今は、違うんだ。また失恋して変わったの。あたしの中に、もう神崎くんはいない」



だから、バイバイ。


あたしはそれだけを神崎くんに伝えると、もう振り返らずにその場を後にした。


…少し前までは、あんなに忘れられなかったのに…不思議。

今は、シュウさんと一緒にいるようになってからは、不思議と神崎くんへの残っていた想いがスーッと消えてなくなっていったんだ。


だから、ちゃんと、心から振ることが出来て良かった。


あたしはそのまま会社を出て外に出ると、迎えに来てくれているシュウさんの車に乗り込んだ…。

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