【完】ある日、恋人を購入した。
あたしはそう言うと、また、尚叶くんの胸に顔を埋める。
こうすると安心するんだ。
この時間が止まって欲しいとさえ思ってしまう。
それなのに尚叶くんはアクビをすると、言った。
「…近くない?」
「だめ?」
「……そんなんじゃないけど。恥ずかしいじゃん」
「え、今更?いい加減慣れてよね」
あたしはそう言うと、朝っぱらから尚叶くんにしがみついて、甘える。
この瞬間が、ホントに幸せ。
…でも、尚叶くんは幸せじゃないのかな。
寝起きだから仕方ないけど、さっきからアクビばっかり。
しかもまた、目を瞑っちゃうから。
あたしはそんな尚叶くんに、言った。不満そうに。
「…また寝ちゃうの?」
「…今日は休みだからね」
「けどあたしがいるよ」
あたしがそう言うと、ふいに尚叶くんの右腕があたしの後頭部に回って、そうかと思えば意外にもそれを優しく撫でてくれる。
その手にも安心していたら、動きは段々緩くなっていって…。
「…尚叶くん?」