【完】ある日、恋人を購入した。
友香はそう言うと、隣で俺にニッコリ笑いかけてくる。
でも一方の俺は、その目をまともに見れなくて。
あったかいからいいけど、この距離は心臓が持ちそうにない。
そう思っていると、やがて映画は始まった。
「……」
黙って観ていると、正直、映画の内容はありきたりなものだった。
キャストは結構有名な俳優ばかりを揃えているのに、ストーリーはなんとなく先を読めてしまう。
…だから、恋愛映画はなんとなく自分から観ようとはしないんだよな。
俺はそう思いながら、自然とアクビをする。
ちら、と隣を見てみると、友香は真剣な表情をしてテレビ画面を見つめていた。
きっと、友香はこの映画が観たかったんだろう。
…眠くなってきたけど、寝たら多分怒られるな。
そう思うと、俺はまた視線をテレビに戻した。
………
それから、どれくらいの時間が経っただろうか。
映画もクライマックスを迎えようとしていた時、俺の眠気は限界に近づいてきていた。
「…、」
さっきから必死で目を開けているけど、瞼は凄い重いし、ちょっとでも気を抜くと寝落ちしてしまいそうになる。
それに、もう何回アクビしてんだ俺。
友香にバレないのが不思議なくらいだ。いや、映画に集中していて気づいてないんだろうけど。
でも、もうクライマックスだし。これを見れば終わる。
俺は自分にそう言い聞かせると、いつもよりも目を開けて、画面を見つめた。
何が何でも、寝ない。寝ちゃいけない。
………しかし、次の瞬間。