【完】ある日、恋人を購入した。

あたしがそう思いながら横目でその人を見ていると、カウンターの中で何やら紙を用意しながらシュウさんが言う。



「ごめんね、友香ちゃん。結構時間かかって」

「いえ…」

「いやさ、相手は早めに決まったんだけど、肝心のコイツ(商品)がなかなか時間とれないっつーから」



で、やっと今日とれたんだよな。


シュウさんはそう言うと、あたしから男の人に目を移し、同意を求める。

でも、その人は「…最近忙しいから」とだけ呟いて顔を背けた。



「…」



もしかして、人見知りする人なのかな?

…見た感じ、わりとカッコイイしイケメン君なのにもったいない。


あたしはそう思うと、その人に話しかけようと試みる。



「あの、お名前なんていうんですか?」

「…」

「あ、あたし、生田友香。トモって呼んでください」



あたしはそう言うと、なんとか振り向いてほしくてその人の顔を覗き込もうとする。

…が、その前に何故かその人が、驚いたような顔をしてあたしの方を振り向くから、思わずあたしがびっくりしてしまった。



「!」

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