【完】ある日、恋人を購入した。

…その言葉にカチン、とくるも、あたしは聞こえないフリをして自分の席に戻って降りる準備をする。


いいよいいよ。迎えに来てくれてる有唯くんに出してもらうから。

そう思ってチャチャッと有唯くんにメールを打って、あたしは最後の1人でバスを降りようとした。


この駅で終点で、さっきのオバサンも、気が付けばあのおにーさんもバスから降りて行く。


そして…



「運転手さーん。いま彼氏がお金出してくれるから、ちょっと待っ、」

『先ほど頂きました。またのご利用を、お待ちしております』

「…え、」



あたしがそう言うと、ふいに運転手に言葉を遮られてそんなことを言われた。


…サキホドイタダキマシタ?

って、有唯くんに?


その言葉にあたしはそう考えながらバスから降りるけど……いや、違う。

あたしはあることに気が付くと、走ってその背中を追いかけた。



「お、おにーさんっ!」

「…」


「ちょ、待っ…



待って!!」


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