Ri.Night Ⅲ
「テメェ、凛音を離せや!!」
「煌っ!!」
再び貴兄に飛び掛かろうとする煌を慌てて止めるけど、
「お前は黙ってろ!!」
煌は聞き入れようとはせず、あたしを一睨みして貴兄に掴みかかろうと腕を伸ばした。
「煌!!」
それを止めようと両手を広げた時、
「煌待て!!」
彼方の制止する声が響いた。
その声にピタッと空中で止まる煌の拳。
「喧嘩してる場合じゃない。そいつに聞きたい事がある」
普段の彼方からは想像出来ないぐらい真剣な声色に煌の顔付きが変わった。
一瞬にして静まり返った公園内は、さっきまで心地良くそよいでいた風も消え失せて。
月明かりと電灯の光りだけがあたし達を照らしていた。
聞こえるのは、自分達の息遣いだけ。
この場から今すぐ逃げ出したい。
じゃないと“全て”が崩れそうで、気持ちが壊れそうで、コワイ。
「──チッ」
静寂を破ったのは煌の小さな舌打ち。
目の前で静止していた拳がゆっくりと下げられ、貴兄に鋭い睨みを利かせながら数歩後ろへと下がる。
「テメェ……早く凛音を離せや」
目を細めて睨む煌に、貴兄が無言で腕を緩める。
貴兄はあたしを解放した後、後ろから隣へと移動した。