Ri.Night Ⅲ

「それは“あの時”答えただろう?俺はお前等とは違う」

「何がだ」


煌の睨みに怯む事なく淡々と答えた貴兄に、探るような瞳でそう問い掛ける煌。


「俺はお前等よりコイツをよく知ってる」

「……回りくどい言い方してねぇでハッキリ言えよ」

「それは言わない」

「あぁ?」

「リン、行くぞ」


貴兄は睨みを利かせている煌を無視すると、あたしの手を取って踵を返した。


「貴!!」


……っ、こんな、こんな別れ方……。



「待てよ」


無理矢理引っ張られて皆に背を向けた時、今の今まで一言も発さなかった十夜があたし達を引き止めた。

その声に貴兄の足がピタリと止まる。


「あの時言ってた“深い絆”はそういう意味か?」


……え?


振り返ると、目が合った十夜は視線をそのまま下げ、もう一度あたしの目を見る。


「……っ、」


十夜が見たのは、あたしと貴兄の“繋がれた手”。


「違うっ!!」


十夜の言った意味が分かって、直ぐに否定した。


あたしは……、あたしは貴兄とそんな関係じゃない!

貴兄と“恋人”なんかじゃない!


あたしは……。


「あたしは……っ!」


……言えない。言えないよ。

貴兄と“兄妹”だなんて、言えない。


だけど、貴兄と“恋人”とも思われたくない。


どうせ離れるのに。

弁解した所で十夜とどうなる訳でもないのに。


それでも“恋人”と思われたくないなんて都合が良すぎる。


“兄妹”と言えないくせに“恋人”と思って欲しくないなんて卑怯だ。


そう思われたくないのなら“兄妹”だと言ってしまえばいい。

獅鷹総長の妹だって言えばいい。


それが言えないあたしは、卑怯以外の何者でもない。
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