Ri.Night Ⅲ


「優?」



どういう事?

出て来いって何?


雑木林をジッと見据えている優音に首を傾げた時、カサッと草木が揺れ動く音がして。


その音に振り向けば、



「中田……?」



雑木林から姿を現したのはなんと中田だった。


何で中田が此処に……?



「お前だろ?俺等をハメたの。そして、アイツ等を此処へ呼び寄せたのも」


「なっ!?」



ウソ……。あたし達をハメたのって中田なの?


もしかして、十夜達を呼び寄せたのも?



なんで……。




「中田、アンタがあたし達をハメたの?」


「………」


「答えてよ」



そう言うけど、中田は固く口を閉ざしていて表情一つ崩さない。


ここまできて何も言わないなんてどういうつもり?



無言は肯定を意味するって事ぐらい中田も分かってる筈なのに。


でも、今更中田に文句を言った所で何も変わらないよね。




「……これで、満足?」



今のあたしにはもう中田を構う余裕なんてない。


一刻も早くこの場から立ち去りたい。

皆の視線から逃れたい。



ただそれだけ。




「中田、あたしはもう鳳皇とは関係無い。だから、アンタともここまで」



もう気が済んだでしょ?


鳳皇と関係なくなったらあたしに構う理由も無いはず。



行こう、と隣に居る優音の腕を引っ張って足を踏み出すと、前に居た貴兄も歩き出した。







「俺は諦めない」



数歩進んだ所で背後からそう聞こえて、立ち止まる。


肩越しに振り返ると、中田は真っ直ぐあたしを見ていた。



「諦めるつもりはない」



力強い眼差しでそう言い放った中田にフッと笑みが零れる。



「アンタも懲りないね」



その言葉を残して立ち去ろうとした時、何故だか十夜達の方を見てしまった。


これが最後だと分かっていたからかもしれない。



皆に見せる最後の姿は笑った顔でいたい。


満面の笑みっていうのは到底無理だけど、今なら少しだけ笑える気がする。


みんな、ありがとう。


そう思えば。

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