Ri.Night Ⅲ

皆を見れば涙が溢れる。


零れ落ちるその前に、再び踵を返した。




もう、バイバイは言えない。


二回も言えない。


声に出すのはもう無理だ。















「凛音………!!」



突然背後から聞こえた叫び声にビクッと身体を震えてまた立ち止まる。



「凛音、行くな!!」


「……っ、」



涙声に近い声であたしを呼び止めるのは、陽。



「凛音!!」



必死にあたしを呼び続ける陽に唇が震える。



「りの……っ!!」



見ていなくても分かる陽の表情に、堪えていた涙がブワッと溢れ出した。



……っ、陽……。



「凛音!!」



何度も何度も呼ぶ陽の声があたしの心に突き刺さって、その場から足が動かない。



……陽、ごめんね。


本当にごめん。


あたしは皆の元へは戻らない。ううん。戻れない。


……ごめんね、陽。



そう心の中で謝罪して、振り返る事なく再び歩き出した。




「……っ嫌だ!凛音!!行くなよ……っ!!」



悲痛な叫び声は凶器の様にあたしに襲いかかり、容赦無く心を抉る。


陽、ごめんね。


ごめん……っ。


獅鷹の事を隠していたあたしを、自分の事しか考えていないあたしを必死に呼び止めてくれる陽。


嬉しかった。

本当に嬉しかった。



「……陽……」


ごめんね。ありがとう。



呼び止めてくれる陽を無視してそのまま歩みを進める。



すると。



「……っ、煌!!」



陽の口からあたし以外の名前が飛び出した。


その名前にドクンと心臓が跳ねる。



「彼方!!」



……っ、陽。



「壱っ……!!」



陽……。



「………っ、十夜っ!!」



──もう、いいよ。




「なんで……っ!!」



いくら陽が皆を呼んでも、四人から返事が返ってくる事はなかった。



それがどういう意味なのか考えなくても分かる。



……もう、何も考えたくない。



「あき……」



ありがとう。


嬉しかった。


呼び止めてくれて嬉しかったよ。



ありがとう。

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