Ri.Night Ⅲ

「富士山のくせに!」

「テメェ、まだ言うか!」

「痛い痛い痛い!!」


憎まれ口を叩いたものの、頬を掴まれているあたしにはやっぱり勝ち目がなく、直ぐに反撃される。


くっそぉー。ムカツク!




「ジュニア」


「……へ?」


「イデッ!!」


突然嵐ちゃんの後方から声が聞こえたかと思うと、いきなりあたしの方へ嵐ちゃんが前のめりに倒れてきて。


その拍子に頬を掴んでいた嵐ちゃんの両手が外れた。



はぁー。痛かった。

さっきより痛みは和らいだものの、まだジンジンと痛む頬。


両手で擦って更に痛みを和らげる。



「イデッ!止めろ!ジュニア噛むな!」


頬を擦りながら嵐ちゃんを見上げると、富士山のてっぺんにジュニアが居て。


どうやら富士山に噛みついて破壊?しているらしい。



「青木ヶ原樹海が参上したよ~」


「時人くん!」


ジュニアと格闘している富士山の後ろからヒョッコリ姿を現したのは、満面の笑みを浮かべている時人くんで。


相変わらずの緩さにほわんと頬が緩む。



「凛音、大丈夫?」

「うん、大丈夫!」


朝からのほほ~んオーラを身に纏っている時人くんは、嵐ちゃんにじゃれ噛みしているジュニアを気にも留めていない。


う~ん、流石時人くん。


そんな時人くんに『青木ヶ原樹海じゃなくて河口湖じゃなかったの?』なんてツッコミはしない。


青木ヶ原樹海でも河口湖でも助けてくれるならどっちでもいいよ。うん。

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