Ri.Night Ⅲ

妃奈との待ち合わせは11時。

待ち合わせ場所までは歩いて15分。


……ということは?


あと15分で用意しなきゃいけないって事!?


あーもう、何をしたらいいんだっけ!?


服は……もう着てる。

あとはアクセサリーだけだ。


あと、問題はウィッグで。

この長ったらしい髪の毛を纏めなきゃいけない。


「嵐ちゃん!そこ退いて!」


ドレッサーの前で富士山を整えている嵐ちゃんを乱暴に押し退けて座る。



「テメェ、俺様が先に使ってたんだよ!」


「これ、あたしのドレッサー!嵐ちゃんはそこの手鏡使って!」



ウィッグを取り出しながら、右手人差し指でテーブルの上にある小さい手鏡を指差す。


背後からチッと舌打ちするのが聞こえたけど無視。


今嵐ちゃんに構ってる暇はないんだから。





「ってか、お前何で“リン”の格好してんだよ?」


鏡越しにそう問い掛けてくる嵐ちゃん。


背中合わせに座っている嵐ちゃんの姿はあたしから丸見えで。


テーブルの上にある小さい手鏡で背中を丸めながら必死に富士山をセットしている。


「こっちの方が何かと都合がいいの」


髪の毛をいつもより適当にピンで止めながらそう答える。



「あぁ?都合って何だよ?」


「都合は都合だよ!あ~、ウィッグ暑い!!」



纏め上げた髪の毛の上にリン変装用ウィッグ2を被る。



「あ、今日はそのカツラなんだ。いつものは長くて蒸れちゃうもんね」


あたしが持っているウィッグを見てフフッと笑みを零す時人くん。


カツラ……なんか聞こえが悪いけどまぁ仕方ない。


男の人はウィッグなんていう言葉知らないだろうしね。

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