Ri.Night Ⅲ
「ったく、財布忘れたらコーラ買ってきて貰えねぇじゃねぇか」
いや、聞いてないし。
「それって遠回しに買って来いって言ってるよね」
財布を受け取りながら冷ややかな視線を送ると、
「よろしく!」
さも当然のように手を上げられた。
にやりとタチ悪そうに浮かべる笑みにげんなり。
「あ、」
富士山復活してる。
「フフン、俺様にかかりゃすぐ元通りよ!」
あたしの視線に気付いたのか、得意気な表情でふんぞり返る筋肉馬鹿。
どこが直ぐにだよ。
時間掛かりまくってたじゃん。
口に出して言うと後々絡むのが面倒臭いから心の中で留めておく。
「優音、行こ」
嵐ちゃんを無視し、優音に声を掛けると、
「優音はお前のアッシーかよ」
嵐ちゃんがお気の毒様とでも言いたげに鼻を鳴らした。
「優音はそれを喜んでるのよ!」
グッと親指を立ててそう言うと、
「アホか!俺をドMみたいに言うんじゃねぇよ!」
頭にゴンッと優音くんのゲンコツが。
「……痛い。殴んなくてもいいじゃん……」
強烈なゲンコツに頭を押さえ、優音を恨みがましく睨み付ける。
「ねぇねぇ、お二人さん。11時まであと10分しかないよ~?」
「えっ!?」
頭上から聞こえた声に顔を上げると、二階廊下から時人くんがあたし達を見下ろしていて。
……っていうか10分前!?
「ヤベッ、凛音行くぞ!!」
「ヤバイヤバイヤバイ!時人くん、教えてくれてありがと!」
靴を履いた優音が先に玄関から出ていく。
続いて出て行こうとすると、
「コーラよろしく~」
背後から能天気な声が聞こえてきた。
その声に「はいはい」と適当に返事をして玄関から飛び出す。
バイクが置いてあるガレージまでダッシュで走ると、エンジンをかけて準備万端の優音があたしにヘルメットを被せた。
そして、ひょいと持ち上げ、バイクに乗せてくれる。
出発の準備が出来たところで、「レッツゴー!」と掛け声を掛けていざ発進。