Ri.Night Ⅲ
「リンくん、あのお店にあるかも!」
妃奈もコーンスープ所在地を見つけたのか、看板を指差してそう言ってきた。
その問いかけに『うん』と返事して、再び人の流れに身を任せる。
お店に足を踏み入れると、繁華街の中心地だからかかなり混雑していて、少しだけ待ち時間があった。
まぁ、待ち時間と言っても5分程度だけど。
順番が回って来て、店員さんに眺めのいい窓際の席へと案内される。
ほぉと溜め息をつきながら椅子に座ると、両腕にぶら下がっている荷物を隣の椅子へ置いた。
二人にも関わらず6人掛けのテーブルに通されたのはあたし達の手荷物を見た店員さんの配慮だろう。
ありがとう、店員さん。
この荷物、椅子一つじゃ乗せきれないもんね。
あー、また優音に買いすぎって怒られるんだろうなー。
優音の般若の様な恐ろしい顔を脳裏に思い浮かべ、思わずブルッと身震いする。
……妃奈の紙袋だって言って誤魔化そうかな。
なーんて悪巧みを考えていると、ふと前方から視線を感じた。
視線を向けると、眉を寄せながら不思議そうにあたしの顔を覗き込んでいる妃奈がいて。
おっと。いけないいけない。
こんな可愛い妃奈にそんな事しちゃいけないよね。
黙って般若様にこの身を差し出そう。
そう覚悟を決めたあたしは、メニュー表に手を伸ばして『何食べよっかなー』とペラペラ捲っていく。
「コーンスープと~、」
あたしがメニューを捲り出したのを見た妃奈は同じ様にページを捲り、楽しそうにコーンスープの名を口ずさんでいる。