Ri.Night Ⅲ


「妃奈……?」


お店を出ると、順番待ちのお客さんばかりで埋め尽くされていて、妃奈の姿が何処にも見当たらない。


すみません、と人を掻き分けながらエレベーターの方へと走っていく。


このビルには飲食店しかなくて、1フロアに2店舗のみという狭さ。

だから、店を出れば直ぐ目につくはずなんだけど……。



キョロキョロと見逃さない様にフロア全体を見渡しながらエレベーターへと近付いていくけど、いくら捜しても妃奈の姿は見当たらない。


……まさか、ビルから出たとか?


そんな筈は、と思いつつも心配になったあたしは、焦る気持ちを抑えながらポケットの中からスマホを取り出した。


履歴を開きながらエレベーターがこの階に上がって来るのを待つ。



あーもう!早く来てよ!


いくらエレベーターの階表示を睨んでも、エレベーターが早く上がってくる事はなくて。


それよりも、エレベーター待ちの人が多すぎて次来るエレベーターに乗れるかどうかさえ分からない状態だ。



これって階段で下りる方が早いかもしれない。


そう思ったあたしは、直ぐ様階段の方へと走り出した。


階段はエレベーターの横にあって、見る限り誰もいない。


よし、階段で行こう。


そう決めた時、持っていたスマホが震えて、慌ててその場に立ち止まった。


『妃奈!?どこ!?』


電話に出てキョロキョロ見回す。


「……っ凛音ちゃ……、リンくん!」


階段の方から聞こえてきた妃奈の声。


もしかして、と思って階段に足を踏み入れれば、階段に座ってこっちを見上げている妃奈を見つけた。

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