Ri.Night Ⅲ
「馬鹿リン。先行くんじゃねぇよ」
突然頭上から呆れ声が降ってきたと思ったら、ぬっと横から右手が出てきて、開いた手からお菓子の袋が幾つか落下した。
「お会計1576円になります」
店員さんのその言葉に財布を開けようとすると、トンッと肩を押され、
「バーカ。お前に払わせる訳ねぇだろ。大人しくそこで待ってろ」
そう言って、素早くお会計を済ませた嵐ちゃん。
何だかんだ言って払ってくれるところが優しいというか男らしいというか。
「何だよ?」
コンビニを出て優音達の元へ向かっていると、嵐ちゃんが怪訝な顔であたしを見下ろしてきた。
『ん~?何でもない。お菓子とジュースありがと』
嵐ちゃんの腕にぶら下がっている買い物袋に視線を落としてお礼を言う。
すると、
「あーあ。俺、甘やかしすぎだなー」
はぁ、と大袈裟に溜め息をつく嵐ちゃん。
『お兄ちゃんは妹に甘いもんだよ』
「……弟の間違いなんじゃねぇの?」
『はぁ!?』
あたし女なんだけど!
そりゃ今こんな格好してるけどさ。
そんな低レベルの喧嘩をしながら合流場所に向かうと、前方にに優音と妃奈を発見。
って、んん?
目を凝らして見てみると、二人は何やら話し込んでいる様子。
なんだなんだ。雰囲気があやしいぞ。
「チッ、先越された」
二人に気付いたらしい嵐ちゃんがチッと舌打ちすると、まるで聞こえていたかのように妃奈がこっちを向いた。
「……あ!リンくん!」
目が合った妃奈が手を上げてあたしを呼ぶ。
と同時に、目の前に居た優音も振り向いた。
『ごめん、遅くなった!コンビニに行ったら嵐ちゃんと会って。っていうか二人共様子変だけど何かあったの?』
ピンクな妄想が渦巻いているあたしは、二人の間に流れる空気が気になって、堪えきれずに聞いてしまった。