Ri.Night Ⅲ

「十夜もどっか行っていねぇしな」


彼方はそう言うと、テーブルに置いていた俺の煙草に手を伸ばし、火をつけて同じ様にソファーへ凭れた。


「十夜?十夜ならさっき下で会ったよ?車を降りようとしたらちょうど十夜も帰ってきてさ。

勇介に用があるから後で来るって。多分もうすぐ来ると思うよ」


壱がそう言うや否や部屋のドアが開かれ、十夜が部屋に入ってきた。


十夜は部屋へ上がるなり俺達を一瞥し、フゥと小さく溜め息をつく。


多分、陽が居るかどうか確認したんだろう。



「陽は?」


案の定、陽の事を聞いてきた十夜。


「連絡つかねぇ」


灰を灰皿に落としながら壱に言った台詞を再度告げる。


俺の返事に再び溜め息をついた十夜はジーンズのポケットに手をやり、中からスマホを取り出した。



「………」


電話を耳にあててから数十秒。


十夜の険しい表情からして陽が電話に出ないのだろう。



「……チッ」


二人掛けソファーへ荒々しく身を沈めた十夜は、スマホを耳から離すと三度目の溜め息を吐いた。



……やっぱり出ねぇか。



「どうする?」


陽抜きで始めるのか?


携帯を握りしめ、項垂れる様に頭を伏せている十夜にそう問いかけるけど、何かを考えているのか、十夜は返答もしなければ動きもしない。

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