Ri.Night Ⅲ
「煌──、」
十夜が顔を上げ、俺の名前を呼んだ瞬間、十夜のスマホが鳴り出した。
一瞬、ビクリと身体を震わせた十夜は前屈みになっていた身体をゆっくりと起こし、スマホを開ける。
「……陽」
小さく呟いたその言葉に、俺達三人はスマホへと視線を移した。
「──もしもし、陽か?ちょっと待て」
スマホを耳から離すと、いつもの様にスピーカーホンにし、音量を最大にしてテーブルの上へ置いた。
「陽、お前今何処にいる?」
そう問いかけたのは俺。
何かあったんじゃないかと心配していたが、連絡してきた所をみると何もないらしい。
ホッと安堵の溜め息を吐く。
『………っ、俺、』
吐き出す様に一言そう言った陽は、言うのを躊躇っているのか、次の言葉がなかなか出てこない。
俺達はスマホを見つめ、陽の言葉をジッと待つ。
……陽、お前、今何処にいるんだよ。
『俺、今から凛音に会いに行く』
「………は?」
一瞬何を言われたのか理解出来なくて。
“俺、今から凛音に会いに行く”
もう一度頭の中で陽の言葉を反芻させた。
……ちょっと待てよ。
「お前、何言ってんだよ!今何処にいる!?」
やっとの事で陽の言葉を理解した俺は、スマホに向かって身を乗り出し、叫んだ。
隣では彼方が「マジかよ…」とこめかみを押さえていて、壱に至っては重い溜め息を吐いている。