Ri.Night Ⅲ
声に出して怒りたいのに、痛すぎて声が出ない。
「悪ぃー悪ぃー、まだ力の加減が出来なくてよ」
「い、今の新技?」
受けた事がない技だったような……。
「そうそう!今の新技、凛音の為に作ったんだぜ」
「いやいやいや、作らなくていいってば」
朝から超ハイテンションな優音にガクッと力が抜けて、ゴロンと仰向けに寝転がる。
「もー、毎朝毎朝技かけられるあたしの身にもなってよ~」
夏休みに入ったというのに、何故か毎日早く起こしにくる優音に嫌気が差してきた。
起きるんなら自分だけ起きてよ。
「ほら、早く起きろって。今日は忙しいんだから」
「……眠たい」
「それはお前が悪いんだろ?だから昨日聞いたじゃねぇか。起きられるのかって」
「だって幽霊屋敷が難しいんだもん」
「お前、いっつもあそこで落ちてるよな」
「優音もビーチで海に落ちてんじゃん」
「それはお前もだろ」
「──っていうかお二人サン。マリオカートの話は後にして早く下りて来いよ」
「ぉわっ!」
「びっくりしたぁ!」
突然乱入してきた貴兄に、ビクッと飛び跳ねるあたしと優音。
「貴兄、突然話し掛けないでよ~。心臓止まるって」
振り向いた先にいたのは、おたまを持ちながらドアに凭れている貴音お兄様で。
「お前等兄ちゃんを仲間外れにすんなって言ってんだろ?マリオカートの話するんならリビングでしろよ」
「えー。貴兄上手すぎるからムカつくんだもん」
「凛音、ムカつくとか言ったら貴兄が泣くぞ」
「そうだそうだ!優音、もっと言ってやれ!」
優音の言葉を強調するかの様におたまをブンブン振り回す貴兄にあたしと優音はドン引き。
エプロン姿でおたまを振り回す高校男児って一体どうよ?
この姿、ファンの皆様に見せてあげたいし。