Ri.Night Ⅲ
「いつ帰ってきたの!?」
「落ち着けって!言うから!な?」
「………」
貴兄の必死の形相に、仕方なくソファーへと腰を下ろして仕切り直す。
「……で?遊大帰って来てるの?」
「あぁ」
「教えてくれたら良かったのに」
「……言えなかったんだ」
唇を尖らせて不満を洩らすあたしに、貴兄が困ったように眉を寄せる。
「遊大が帰って来たのは“あの後”すぐだったから……」
「………っ」
……あぁ、そうか。
「……ごめんね、貴兄」
二人が黙ってたのはあたしの為だったんだ。
あたしが“あの日”以来ずっと落ち込んでたから。
「謝らなくていい。凛音の気持ちが落ち着くまで俺が言いたくなかったんだ。
……正直、今でもあまり言いたくないんだけどな」
「何で……?」
眉を寄せてあたしをジッと見つめる貴兄に、あたしもつられて見つめ返す。
「行くのが……倉庫だから」
「え?倉庫?」
「あぁ。だから言えなかったんだ。凛音の気持ちは分かってるから、そんな傷口をえぐるような事言えなかった」
「……貴兄…」
「最初は遊大が帰って来た事だけ伝えて倉庫に呼ばないつもりだった。けど、遊大が凛音に逢いたがっててな。“みんな”揃って逢いたいって」
“みんな、揃って”……。
「遊大は“あの事”を知らない。だから……」
「……うん。いいよ」
貴兄の言葉を遮って、そう返事する。
「……本当に良いのか?別に断ってもいいんだぞ?後で家に呼んだらいいんだから」