Ri.Night Ⅲ




駅から10分程の場所にある凌の家。


あらかじめ凌に連絡していたからか、門は既に開けられていた。


お客さん専用駐車場に車を停車させて一緒に車を降りる。


いつ見ても大きい家……。


首が痛くなるぐらい見上げないと全てが収まりきらないぐらいの豪邸。


いや、見上げても全然収まり切らないんだけど。




「行くぞ」


貴兄の一声で一斉に歩き出したあたし達。


真紀さんに会うのは一ヶ月前のお祭りの日以来だ。



あの時はまだ、十夜達と離れるなんて欠片も思ってなかったし、転校するなんて思ってもいなかった。


皆と一緒にお祭りに行けるって、幸せな気分でこの家に来たのに、まさか一ヶ月もしない内にこんな気分で此処を訪れる事になるなんて。





「貴音、これ……」

「ありがとう。真紀さん」


真紀さんから手渡される不備ありの転校手続きの書類。


それに貴兄が記入し、再び真紀さんに手渡す。


目の前で行われるそのやり取りを、あたしは他人事の様に見ていた。
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