Ri.Night Ⅲ
「……行くか。アイツ等が待ってる」
全て終えて一安心したのか、貴兄はそう言うと、ふぅと小さく息を吐き出した。
真紀さんと一言二言言葉を交わし、あたし達に目配せをして先に歩き出す。
「凛音、ちょっと待って」
三人の後に続こうと真紀さんに背を向けた時、突然腕を引かれれて足を止めた。
振り返ると、真紀さんの複雑そうな瞳に捕らえられて、そっと肩に手を添えられる。
真紀さん……?
「凛音、書類はギリギリまで出さないでおくわ」
「え?」
思いもよらないその言葉に目を見開いた。
「何があったかは聞かないわ。だけど、悔いはないようにしなさい」
悔いは、ないように……?
「ほら、早く行きなさい」
いつもの優しい笑みに戻った真紀さんが、あたしの背中を軽く押して早く行くよう促す。
けど、数歩進んだ所で再び真紀さんに呼び止められて肩越しに振り返った。
「……あの子達、いえ、学校にいる時の貴女は誰よりもいい笑顔だったわ。それだけは忘れないで」
哀しみを帯びた双眸に息が詰まって、唇がきゅっと強く結ばれる。
何か言わなければいけないって分かってるけど何の言葉も出てこなくて。
小さく頭を下げてその場から駆け出した。