Ri.Night Ⅲ
「ううん、大丈夫。遊大、我が儘だから言う事聞いとかないと後でうるさいからね」
「凛音、無理すんな」
「そうだぜ。凛音、遊大はほっときゃいいんだから。どうせ呼べば明日にでも遊びに来るだろ」
深刻な面持ちの貴兄とは打って変わって、優音はしれっとした表情で毒を吐く。
「大丈夫だよ。あたしも皆に逢いたいし。二人共ありがと」
「行きたくなくなったらすぐ言えよ?」
「うん。……じゃあ、出掛ける準備するね」
そう言って、テーブルに置いているコーヒーカップに手を伸ばし、残りのコーヒーを全て飲み干してから立ち上がる。
「ねぇ、貴兄?倉庫で何するの?」
キッチンでコップを洗いながらそう聞くと「おかえりパーティー」と苦笑しながら答えた貴兄。
「おかえりパーティー?」
「そ。まぁ、いつものどんちゃん騒ぎだろ」
何故かいつも遊大に対してだけ毒を吐く優音は、カラカラとコップを鳴らして立ち上がる。
「お前、準備するんだろ?後は俺がやっといてやるから準備してこいよ」
キッチンに歩いてきた優音はカップを流し台に置きながらそう言うと、あたしの手からスポンジを奪い取った。
「いいの?ありがとー」
その言葉をすんなり受け入れたあたしは素早く泡を洗い流し、「優音は名前通り優しいよね~」と誉めながらタオルで手を拭く。
そんなあたしに「ホントお前って現金な奴だよな~」と呆れた顔で言う弟優音くん。
……とか言いながら喜んでるくせに。
横から優音を見上げると、口の端がちょっぴり上がっているのが見えて、ふふっと笑う。
ホント素直じゃないよね。
「優音くん、素直にならなきゃね?」
そう言って後ろからギュッと抱きつくと、
「うっせー!早く準備してこいって!」
照れているのか、身体を揺らしてあたしを引き離そうとする優音。
これ以上引っ付いてるとホントに怒ってきそうだったから、「後はよろしくね~」と言ってその場から早々に離れた。