Ri.Night Ⅲ
「ちょっと急用が出来たから出てくる。お前は遊んでろ」
『優音も?』
「あぁ。……それと、何時に帰って来れるか分からない。もし遅くなって先に帰りたくなったら慎にでも送って貰え」
『……うん、分かった』
貴兄は感じてるかどうか分からないけど、陽の事があるせいか、貴兄との間に少しだけ不穏な空気が流れている様な気がした。
「ごめんな。放っておいて」
だけど、そう感じているのはあたしだけのようだ。
申し訳なさそうに眉根を寄せる貴兄は、さっき以上に優しい表情であたしを見下ろしていて。
その表情にチクリと胸が痛む。
優しく笑う貴兄を見ていつも思う。
どうしてこんなにも優しいんだろうって。
どうしてこんなにも心が広いんだろうって。
陽の事を知って少なからず嫌な気持ちを抱いている筈なのに。
貴兄は昔から自分よりも人を優先する所がある。
助けて、護って、“居場所”を与えて。
その心地良い場所を求めて集まってくる人達は、貴兄の包み込む様な優しさに惹かれ、慕う。
だから温かいんだ。
獅鷹という“場所”は。