Ri.Night Ⅲ
陽の笑顔、久しぶりに見た気がする。
──あの日。
中田に拐われたあの日から、陽の笑顔を見ていない。
あたしの中で残っている陽は、真実を告げたあの時に見たあの泣き叫ぶ表情で。
陽の顔を思い出す度、あの時の表情が鮮明に映し出される。
可愛い笑顔よりもより鮮明に。
もう見れないと思っていた笑顔がまた見れるなんて思わなかった。
「……陽、ありがとう。此処まで来てくれて」
陽の可愛い笑顔を見せてくれてありがとう。
「凛音……」
陽の右手があたしの左頬にそっと触れる。
指先から感じる陽の温もり。
陽が目の前にいるんだと実感させられる。
「俺、ずっとずっと考えてたんだ。どうすればいいのかって」
……陽?
頬に触れている手が微かに震えている。
陽の瞳を凝らして見れば、その瞳には段々と哀しみが滲んできていて。
「陽──」
「俺、やっぱり凛音と友達でいたい」
「………っ」
「鳳皇とか獅鷹とか関係なく、一人の人間として凛音と友達でいたいんだ」
不安を孕んだ瞳が真っ直ぐあたしを貫く。
その瞳からは迷いは一切感じられない。
陽の本心。
きっと考えて考えて考えて。
そして、悩んだのだろう。
「陽……」
震えている陽の指先が、そう告げている。