Ri.Night Ⅲ
54.翻弄される心
-煌 side-
「どうする?S県に入ったけど」
「どうするって、アイツが電話に出ねぇんじゃ迎えに行きようがねぇよ」
バックミラー越しに視線を寄越す壱に投げやりにそう応え、お手上げだと言わんばかりに座席に深く背中を沈み込ませる。
そんな俺を見て苦笑混じりに小さく溜め息をついた壱は、俺から十夜に視線を流した。
同じくバックミラーに十夜を見ると、相変わらず無表情な十夜の顔。
思わず目を開けて寝てるんじゃないかと疑ってしまう程無表情だ。
寝てたとしたら申し訳ないが、今すぐ起きて貰わないといけない。
この状況を目の前にして、どうすればいいのかさっぱり分からないし、何よりも、獅鷹に行くと言い出したのは総長である十夜だ。
指示して貰わないとどうする事も出来ない。
「取り敢えず獅鷹の近くまで行け」
「……OK」
おもむろに目を開けた十夜がそう指示を出す。
それに小さく頷いた壱は、緩めていたスピードを通常通りに戻して獅鷹に向かった。
どうやら起きていたらしい。
だったら目が合った時ぐらい表情を変えてくれよな。
さっきまで真っ直ぐ正面を見ていた瞳はいつの間にか窓の外に向けられていて、少しだけ寂しそうに見えた。
……なぁ、十夜。
お前は今、この地に来て何を考えている?
何を想って何を感じてる?
その無表情の裏にどんな感情を隠してるんだよ。
俺には分からない。
お前が何を想って何を考えているのか。
俺には分からないんだ。
──お前は、何がしたい?
言ってくれれば俺達全員で助けてやる。
全員で考えて、全員で助けてやる。
なぁ、十夜。
それが鳳皇。
それが仲間なんじゃねぇのかよ。