Ri.Night Ⅲ
「お前は誰だ?陽は?」
まさか陽以外の人間が電話に出るとは思わず、車内に動揺が走る。
「陽は何処にいる?」
『………』
「陽に代われ」
『………』
「聞いてんのか?陽に代われ」
『………』
いくら喋りかけてもうんともすんとも言わない男に苛立ち、チッと舌打ちする。
向こうから電話して来たのに何故何も言わない?目的は何だ?
何故陽の携帯を持ってる?
何が、したい?
考えれば考える程相手の男に不信感が募っていく。
「お前、誰だ?」
十夜の威圧的な声が響いて、さらに車内の空気が張り詰められる。
姿が見えないとは言え、この威圧的な声を聞けば誰しもが白旗を上げるだろう。
顔を上げて十夜を見ると、十夜の体勢はさっきと変わらなくて。
けれど、視線だけはしっかりとスマホに向けられていた。
その視線は氷よりも冷たく感じる。
きっと十夜も陽の身を心配しているんだろう。
『──宮原 陽は怪我している。迎えに来い』
「は!?オ、オイ!それ……!」
──プツッ。
言い終わらぬ間に通話が途切れ、無機質な機械音が車内に響く。
相手の意図が全く掴めない内に一方的に遮断された通話。
いや、それはどうでもいい。
それよりも奴の言った事の方が気になる。
陽が怪我してる……だと?
何でそんな事になってんだよ。