Ri.Night Ⅲ
急に訪れた喪失感に、何がどうなっているのかも分からなくて。今はもう歩いている感覚さえ無い。
どうして……そんな表情してるの?
引き剥がされた瞬間に見た十夜の表情が目に焼き付いていて離れてくれない。
振り返ってどうしてって問い詰めたいけど、今は振り返る勇気なんて無かった。
だって、問い詰めても受け入れてくれる事はないって分かってるから。
「……っ」
拳を強く握りしめ、ギリッと唇を噛み締める。
──もう、逢わない。
十夜、バイバイ。
心の中でそう別れを告げ、背中に感じる十夜の視線を振り切る様にその場から力一杯走り出した。
「……はぁっ……、はっ……っ!?」
公園の出入口から出た途端足が絡み、身体が前へと倒れる。
顔面直撃は免れたものの、手のひらと両膝を思いっきり地面へ打ち付けてしまった。
「……ふふっ……」
手のひらから滲み出る血を見て笑みが零れる。
心は空っぽなのに、それでも痛みだけは一丁前に感じるなんてね。
けど、今は血が滲む手のひらより胸の痛みの方がよっぽど痛かった。
グッと締め付けられる様な痛み。
不規則に乱れる心音。
もう、痛いのか苦しいのか、それさえも分からない。
心中に色んなモノがぐるぐると渦巻いて。
もう、何も考えれなかった。
今、思っている事は一つだけ。
泣きたい。
誰の目にも触れない所で思いっきり泣きたい。
ただ、それだけ。