Ri.Night Ⅲ
「遅くなってごめん!」
ドアを開けてリビングに入ると、同時に振り向いた二人。
「久しぶりだな、その格好」
「こっちに帰って来ても倉庫行かなかったからね」
ほぼ半年ぶりかも。
ソファーに近付いて行くと、二人はスマホを手に持って立ち上がり、あたしの前に並んだ。
「声の調子は?」
『余裕』
「ククッ……練習でもしてたのかよ」
肩を揺らして笑う貴兄に『してねぇし』と乱暴な口調で吐き捨てる。
「まぁ、変わりなさそうで良かったよ。“リン”」
『そっちもね、貴』
「……オイ。俺に挨拶は無しかよ」
『優、拗ねんなって』
優音の肩をガシッと組めば、嫌そうに顔を歪めるツンデレ優音くん。
可愛い奴め。
「じゃあ用意も出来た事だし行くか」
そう言って歩き出した貴兄に優音と並んで着いて行く。
貴兄が呼んだ“リン”っていうのはあたしが男装した時の仮名で、男装した時は必ずこの名前で呼ばれる。
男の姿で凛音って呼ぶのは流石にオカシイからね。
凛音の“凛”を取って“リン”という呼び名にした。
ついでに声も変えて男の声に。
男装を始める前からそういうのは得意だったから楽勝だった。
お陰で、今まで一度も女だとバレた事がない。
獅鷹のメンバー達も男だと思って接してくるから余計に男が板についてきて、今じゃ女だって言っても信じて貰えない程。
こんな性格になったのって絶対周囲の環境のせいだと思うんだよね。
でも、皆の事が好きだから男装してでも倉庫に行きたかったんだ。
皆、元気にしてるかな……。