Ri.Night Ⅲ

貴兄、今日は帰って来るの早いんだ。


実は最近、貴兄とはあまり顔を合わせていない。


ううん、貴兄だけじゃない。


今、当然の様に一緒にいるけど、優音とも久しぶりに顔を合わせたぐらいだ。


まぁ、あたしが部屋に閉じ籠っていたというのも原因の一つだと思うけど。


だけど、それ以上に二人が家に居る事の方が少なかった。


倉庫に行っているという事は顔を合わせた時に前以て聞いていたけど、前はどれだけ深夜になっても絶対帰って来ていたのに、最近は帰って来ない事の方が多い。


それが極端に多くなったのは“あの日”。


十夜と別れた、“あの日”からだ。





あの日、貴兄と優音は家に帰って来なかった。


翌日も帰って来たと思ったら直ぐに出ていったし。


多分、前から揉めていた件で何かあったんだと思う。


だけど、それはあたしにとって凄く都合が良くて。


たまにしか顔を合わさない事に安堵さえ抱いていた。


それはきっと、十夜達と再会してしまったから。


二人に黙って十夜達と逢ってしまったから。


貴兄達がいつも通りに家に居たら、きっと逢っていた事がバレていたと思う。


それぐらい態度に表れていた。



簡単に隠せる程あたしの心は強くなくて。


簡単に消せるほど弱い想いじゃない。


色んな想いが波のように押し寄せてきて、とてもじゃないけど平静ではいられなかった。


だからあの日、貴兄と優音が帰ってこなくて良かったと思った。

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