Ri.Night Ⅲ

だけど、それに反して寂しいとも感じた。


一人で家に居るのが寂しい。


矛盾しているのは分かっている。


だけど、一人になれば嫌でも皆の事を思い出す。


抱き締められた温もりを思い出す。



それは思い出したくて思い出してるんじゃない。


自然と浮かんでくるんだ。



抑えきれない想いが頭の中に映像になって、そして儚く消えていく。


リアルに感じられる程ハッキリとあたしの脳裏に焼き付いていく。


何度も何度も何度も。


繰り返し浮かぶ事によってまた忘れられなくなる。


一人でいるとその繰り返し。


悪循環。


それは十分すぎる程分かっていた。


だけど、そう分かっていても、自分ではこの感情をどうする事も出来なかった。


鳳皇と別れた時は常に誰かが傍にいてくれて。


それに救われた。


だけど、今はいない。

誰もいない。


時々遊びには来てくれるけど、忙しいみたいで直ぐに帰っていく。


だから自分でどうにかするしかなかった。



いつまでもこのままじゃいけない。


そう思い始めて数日。


この引っ越しの話が出た。



丁度良かったと言えばそうかもしれない。


気分が浮かばなくても前に進むキッカケにはなった。


いい加減ウジウジするのは止めよう。


ここで終止符を打つんだ。


新しい未来を築いて行く為に。


鳳皇への想いを、この地へ置いていく。


それがこの引っ越しの“意味”。

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