Ri.Night Ⅲ
『ド〇キ・ホーテで何か買うの?』
店内に足を踏み入れながら貴兄にそう問い掛けると、
『ドンドンドン、ドー〇キー、ド〇キホーテ~。クラッカー買うんだってさー』
店内の音楽に合わせてノリノリで歌っている優音くんが代わりに答えてくれた。
いや、っていうかさ、恥ずかしいから止めようよ。ファンの子にドン引きされても知らないよ?
さっきからずっと口ずさんでいる優音に冷めた視線を送りながらキョロキョロと周囲を見回す。
っていうかクラッカー?
クラッカーで何すんの?
「パーティーと言えばクラッカーだろ?」
エスカレーターの前で優音に手を差し出され、その手を「ん」と握る。
『あ~、パーティーに使うのか』
『よっ』と掛け声をかけながらエスカレーターに飛び乗ると、先に乗った貴兄が呆れた顔であたしと優音を交互に見てきた。
「お前等、手繋いでいいのかよ」
『ん?』
「は?」
貴兄の視線を辿っていくと……。
『あっ!』
「ヤベッ!」
やっと貴兄の言いたい事が分かって、同時にパッと手を離した。
やっばー。この姿で手なんか繋いだら……。
「女の餌食になっても知らねぇぞ~」
そうなんだよ。餌食になるんだよー。
いや、正確には餌食と言うよりネタにされてしまうっていうか。
「見られた?」
『た、多分大丈夫。エスカレーターだし』
不審者のように横目でチラチラと周囲を窺うあたしと優音。
ヤバイヤバイ。男だって事忘れないようにしなきゃ。