Ri.Night Ⅲ
56.絡まる糸、解ける糸
────…
「──来い」
その呼び掛けにそっと両手を伸ばすと、優音は優しく抱き止めてくれて。
抱き直した後、遊大と並んで玄関へと歩き出した。
甘えるように優音の首元へと顔を埋めると、大丈夫とでも言うようにあたしの背中を優しく擦ってくれる優音。
その優しい仕種に泣きそうになった。
玄関付近まで行くと、優音が開ける前に開いた玄関のドア。
そのドアの音に顔を上げると、玄関から出てきた貴兄と目が合った。
「凛音………来い」
目が合うなり穏やかな口調でそう言ってくれた貴兄に、直ぐ様両腕を伸ばしてその胸に飛び込む。
「貴兄……」
全体重を貴兄に預け、首に腕を回してギュッと抱きつく。
「もう大丈夫だ」
そう言って、まるで子供をあやすようにあたしの頭を優しく撫でてくれる貴兄。
その仕種に堪えていた気持ちが一気に溢れ出した。
「……ぅ……っ、」
「……一緒にいてやれなくてごめんな」
その言葉にフルフルと頭を左右に振り、抱き締める腕の力を強める。
「──貴兄」
「……あぁ、分かってる」
貴兄と遊大のそのやり取りに、あぁ、これから遊大に“あたしと鳳皇の関係”を話すんだと思った。
もう隠しておく事なんて出来ない。
十夜と接触しただけなら未だしも、遥香さんも関わっている事が分かったのだから。
遊大には知る権利がある。
そして、あたしも知らなければいけない。
「遊大、後であたしの部屋に来て」
「……分かった」
──遥香さんの事を。