Ri.Night Ⅲ
「リン、一旦離れるか」
『う、うん。そうした方が良さそうだね』
「お前あっちな」
『じゃあ優はあっちね』
お互い行く方向を目で合図し合い、くるりと背中を向けて歩き出す。
『はぁ……』
楽になった。
あのまま二人と一緒に居るとボロが出そうっていうか、女子からの視線が痛くて居づらかったんだよね。
取り敢えず二人と離れる事が出来たし、貴兄達がクラッカー買いに行ってる間にこの辺ブラブラしよーっと。
鼻唄を歌いながら店内を見て回る。
あっ、そう言えばもう少しでマスカラがなくなりそうだったかも。
ド〇キ安いし、買っておこうかな。
思ったらすぐ行動のあたしはくるりと踵を返し、再びエスカレーターに飛び乗る。
確かマスカラは一つ下の階だったような……。
うん、合ってた。
フロアいっぱいに並ぶ沢山の化粧品にニッと笑って、エスカレーターから下りる。
お目当てのマスカラを探そうと辺りを見渡すけれど、人が多すぎてなかなか前に進めない。
よしっ!と意気込んで、人の隙間を縫って進もうとした───その時。
「あの~」
ん?
「すみません、お名前教えて頂けますか~?」
『は?』
突然声を掛けられたと思ったら数人の女の子達に囲まれて。
『ちょ……!?』
許可なく上半身をペタペタ触られた。
は?え?ちょ、何!?
全然意味分かんないんだけど!!