Ri.Night Ⅲ

「凛音ちゃん、また管理人室に遊びにおいで」


「……うん」



おじさんのこの大きな手が好きだった。


一言会話する度頭を撫でてくれるこの優しい手が好きだった。


この手ともお別れなんて本当に寂しい。



「こっちに来た時遊びに来るね。あ、でも住人じゃないのに入っていいのかな?」


「凛音ちゃんなら大歓迎だよ。いつでもおいで」


おじさんは頭に置いた手を肩へ移動させると、今までで一番穏やかで優しい笑顔を向けてくれた。

その笑顔につられて笑みが零れる。



「そう言えば今日はお兄さんと弟さんは一緒じゃないのかい?」


「あ、今日は一人なの。二人共何かと忙しいみたいで」


「そっか。もし何かして欲しい事があったらすぐおじさんに言うんだよ?」


「うん。おじさんありがとう!」


どこまでも優しいおじさん。


ホントに大好き。



「じゃあまたね」と手を振ってくれるおじさんにもう一度お礼を言って、エレベーターに乗り込む。


本当のお別れはまだもう少し先だけど、おじさんの優しい笑顔と思いやり溢れる言葉に別れが近いことを実感させられた。

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